中央ロワールトピック2022

3月まではコロナ禍の影響での制限がまだありましたが、サン・ヴァンサンのミサは執り行われ(昨年同様に引き続き中止する村もありました)
サンセール村においては、ミサの参加者も制限があり、かつ教会でのミサの終了後に村の集会所で行われる新酒を振る舞うアペリティフは集会人数に厳しい上限規定があったため中止され
その代わり、教会に残り生産者たちが参加者に振る舞うという歴史上初めての試みがなされました。
また、マスク着用義務もあったため、2年続けてのミサはマスク着用、人数制限など、異例な状態が続く祭事となりました。

規制と緩和の繰り返しの状況が続く中、3月以降は戦争の影響も考慮され、どんどん規制が撤廃され始めました。

そのため、レストランにおいてもマスク着用義務が従業員においても撤廃され一気に自由な雰囲気が戻り始めます。

ワイン業界では中止と延期が続いた大きな展示会が次々と再開されるようになりました。

特にフランスにおいてはコロナの規制がもっとも緩和されていたため、2月14日からスタートしたワインパリはアジア圏以外の国内外のプロが久しぶりに集まり活気を取り戻しました。

コロナ禍においても、ロワールワインを含めフランスワインの世界的需要は急騰し、生産者も驚くほど歴史的な輸出量を記録しており、2021年の壊滅的な晩霜被害で既に争奪戦の状態です。

コロナ禍で海外出張も大変困難な時期がありましたが、SNSなどネットにおいて新たな輸出先顧客が付くという現象も顕著でした。

また戦争の影響がどんどん濃くなってきたのが3月以降です。

この時点でワインに関する備品においても想定外の状態が始まります。

フランスでは4.5%のインフレで、すべての価格が上昇しています。

価格高騰はすべての備品、箱、コルク、キャップシール、ボトルに影響を与えました。

葡萄畑でもすべての道具類において高騰がみられました。

キャップシールにおいては入荷待ちが長引きいくつかのワインはキャップシーツなしで輸出に出されるという状況も発生しており、コルク、さらにはボトル、特に特別キュヴェ用の瓶が不足しています。

したがって、ヴァンサン・グラルにおいては現在ル・グラルとマノワール2020ヴィンテージはボトルの到着を待っており無事に入荷された場合9月の初めにボトル詰めされます。

(通常は2月と6月の二回に分けますが、備品不足でどのドメーヌもスケジュールが狂い目処も立たない状況です)

生産者はこれらの影響で今後ワインの価格高騰は避けられないのではないかと懸念しています。

コロナの制限がほぼ撤廃されたフランスでは、日常が完全に戻っている状態ですが

とりわけ、サンセールにおいては観光部分において大きく変化しました。

もともとヨーロッパと北米の観光客で賑わうサンセールですが、2021年にフランスの有名なテレビ番組が主催する「フランス人が選ぶお気に入りの村」で一位になりました。

2021年はまだ色々制限があったものの夏の観光客は飛躍的に増え、この効果影響はこの夏に更に出ていると言える状態で、週末は大混雑の状態です。

街を上げてのイベントに積極的なサンセールでは、9月までの間毎週金曜は21時まで商店がオープンし、コンサートや葡萄畑の映画開催、サンセールワイン博物館では同じく毎週金曜に各村毎の生産者によるテイスティング会が行われる等のイベントが目白押しです。

全てのイベントやお祭りではサンセールワインが必ず登場しますが、地元で作られるクラフトビールもまた生産者の間でも好評で観光客からも大人気です。

もちろん、地元の名産チーズのクロタン・ド・シャヴィニョルは欠かせません。

どのレストランもそうですが、ワイナリーでも試飲の際に出されるクロタン・ド・シャヴィニョルは熟成師によって風味の仕上がりが微妙に違うのも面白味の一つです。

特にパリでも購入することが出来ない出来立てヨーグルト状のクロタン・ド・シャヴィニョルを名乗れる前の状態のフレッシュチーズはクセもなくヨーグルトよりもカルシウムや栄養価も高いので朝食のお供やタルト料理に活用されたりなどと人気があります。

クロタン・ド・シャヴィニョルとガレット・ド・ポムドテール(じゃがいもとチーズが練り込まれたパイ)は、ワインのお供として絶対に欠かすことはできません。

また意外だと驚かれますが、エスカルゴも名産地が近くにあり(特にサンセールはブルゴーニュ圏と隣接している影響もありますが)イベントでよく見かけられるのです。

サンセールの丘の村のレストラン飲食店は2021〜2022年に新たに2軒がオープン、ワインバーは2021〜2022年の間に3軒オープンと賑やかにひしめき合っていますが、どこも地元っ子はもちろん観光客やサンセールにある私立の語学学校に集まる北米の裕福層の長期滞在観光客で連日賑わっています。

 更にコロナ禍後半から現在にかけて若い世代によるワインブティックが3軒オープンし、地元のワインはもちろんですがそれぞれのお店の個性豊かなセレクションがより種類豊富に楽しめるようになりました。(数え出してちょっと驚きました)

 とりわけイベントにおいてはサンセールを上げての夏の目玉イベントであるワイン祭りFoire aux vins Sancerre とスポーツイベントのTrail de Sancerre は2年ぶりに規制のない状況で復活され、特にトレイルは10回目を記念する大きな節目を無事に迎えることができました。

ワイン祭りの方は、サンセールの全ての村のワインがそれぞれブースを出し生産者たちがサービスしてティスティングが出来る仕組みになっており、この日程でワイン関係者による品評会も行われます。

また、新しいビンテージが揃うのでフランス国内はもとより海外からのバイヤーも多く参加されます。(特に欧州圏のバイヤーはバスをチャーターして来るほどです)

一般の観光客、ワイン愛好家、プロが挙って同時に楽しめるイベントでもあります。

トレイルランはフランスでも人気が高く、またサンセールは非常に高低差が激しいため、難易度もそれなりにあり参加者の顔ぶれも錚々たる猛者が見られます。

過去に日本からのエントリーは男性で最長コースの「マグナム」35km、高低差1100mがありました(完走)。

また、ヴァンサン・グラルのトピックとしては

彼らがコロナ禍中にクラウドファンドで立ち上げた新プロジェクトの一つである

葡萄畑のプライベートテイスティングコースのla cabane de vigne (葡萄畑の作業小屋を改良したテラスで絶景の景色を眺めながらアペリティフを含む貸切りティスティングコース)が7月半よりいよいよ開始されました。

このクラウドファンドでは、海外のサイトにも関わらず多くの日本のお客様からもご支援をいただいており、彼らはとても感激しております。

近い将来、ここで乾杯をしながら日本からのお客さまたちと一緒に豊かな時間を過ごせるようになることが一つの夢になりました。

 

この区画はサンセールの丘の東南側斜面でシレックス土壌、そしてロワール河からのプイィ・シュール・ロワール(プイィ・フュメ、ニエーヴル・ブルゴーニュ圏)が望める絶景ポイントのトップに挙げられます。

夏の夕方、涼しくなる頃にこの場所でゆったりと天国のような美しい景色を眺めながらアペリティフを楽しむのは至福の時間以外の何ものでもありません。

同時進行で、マダムはドメーヌの隣の敷地にある家を改装しシャンブルドットを始める準備に入りました。

ここではサンセールの郷土料理の料理教室も予定されているようです。

大きな3つのベッドルーム(追加のソファベッドもあり)、クーラー完備、バスタブ付きで住むようにサンセール滞在を楽しんでいただけるようなスタイルにしたいそうです。

そしてグラル家末っ子の次男のコームは、今シーズンからサンセールの名門の一つ

ドメーヌ・ジットンで畑仕事の修行を始めました。

(長男のジャンは、これまで通りヴァンサン・ピナールで主要メンバーとして畑仕事を任されています。)

ますますこれからの将来が楽しみになりました。